公益信託 倫雅美術奨励基金

設定趣意書

私は、美術評論、日本美術史の分野で50年近くにわたって活動をしてきましたが、この間の我が国美術界の隆盛とその芸術的精華にはあらためて目を瞠るものがあります。
 これらの輝かしい幾多の美術作品は、日本伝統の美術文化と明治以来の西欧の美術文化との相克触発の中で、諸先輩たちの厳しい芸術上の精進によって創り出されてきたものであります。今後我が国の美術がより豊かな芸術的成果を産み出すために、これらの諸先輩が示した芸術上の進取の精神と我が国の根深い美的伝統が、次代を担う若い美術家たちにしっかりと継承されていくことが強く期待されます。
 その為には力のある有望な若手美術家たちが日本美術界の明日を、あらゆる分野で立派に担っていくことができるよう、彼らに対し物心両面にわたる励ましと援けを考える必要があります。しかし、世界でも1、2の経済大国となった我が国においても、若手美術家たちが置かれている現実の環境は必ずしも恵まれたものではなく、現状は寒心に堪えないというのが正直なところであります。
 私は、明日の美術の創造と評論を担う有望な若手美術家たちの本分野における優れた活動を顕彰することにより、我が国の美術振興および若手美術家の育成に寄与することを目的として公益信託を設定することを発起致しました。

平成元年5月10日
河北 倫明

基金概要

発足年月日 平成元年7月12日
主務官庁 文部科学省
当初信託財産 50百万円
委託者 河北 倫明
受託者 三菱UFJ信託銀行
運営委員長 田中 淳
設立の趣意 わが国の美術が今後ともより豊かな芸術的成果を生み出し、わが国の美的伝統が次代を担う美術家達に継承されることを期待して、本基金は河北倫明氏より財源の提供を受け発足した。若い世代の優れた美術評論、美術史研究および美術創作に対する奨励と援助を行い、もってわが国の美術がより一層、発展することを願うものである。
信託目的 優れた新鋭の美術評論家、美術史研究家および美術家の活動に対し、顕彰を行うことにより、わが国の美術振興および若手美術家の育成に寄与する。
事業の概要 優れた新鋭の美術評論家、美術史研究家の活動に対する顕彰。
1.選考対象/概ね2年間にわが国で発表された優れた美術評論、美術史研究、展覧会の企画およびカタログ中の論文
2.年齢/その年の12月31日現在で、50歳以下の者
3.顕彰金/100万円
4.顕彰人数/2名程度
5.顕彰先の決定/推薦委員の推薦にもとづいて選考委員が整理選考し、運営委員会において決定する。
※現在、美術家の創作活動に対する顕彰は行っておりません。