公益信託 倫雅美術奨励基金

「倫雅美術奨励賞」30周年を迎えて

「倫雅美術奨励賞」30周年を迎えて

田中淳

 1989(平成元)年7月に、公益信託倫雅美術奨励基金が創設され、同賞による顕彰事業がはじまりました。今年は、同賞もおかげさまで30周年を迎えることができました。
 その間に、毎年2名ほどの受賞者を選定し、顕彰してまいりました。
 同基金創設者である故河北倫明氏が、「明日の美術の創造と評論を担う有望な若手美術家たちの本分野における優れた活動を顕彰することにより、我が国の美術振興および若手美術の育成に寄与することを目的」に設けられた賞です。この目的は、今も守られ、その高い理想と未来への期待はひきつがれています。

 ところで、現在では、全国に400館に及ぶ公私立美術館があるといわれています。これは30年前にくらべれば、飛躍的に多くなり、また全国にくまなく美術館があるといっていい状況になっています。しかしながら、美術館をとりまく地域社会は、何年も前から「地方創生」とうたわれながらも、経済的にはきびしさを増しているといえましょう。そうした中で、各美術館では、学芸員諸氏が、地域社会との関係を意識しつつ、地道な調査研究をかさね、工夫をこらした展覧会がつぎつぎと開催されています。この賞が、もしそうした学芸員、研究者の成果を顕彰し、奨励につながれば幸いだとおもっています。創設者の遺志をついで、これからも有望な才能による成果と努力を顕彰して参りたいとおもいます。

 同基金の運営にあたりましては、これまで多くの方々のご支援とご協力をいただいております。特に毎年の同賞選考にあたりましては、全国にわたりお願いした多くの推薦委員の方々にご協力いただいております。ここに感謝の意を表するとともに、今後とも同賞にご理解とご支援を賜ることをお願い申し上げて、この度の周年の言葉といたします。

(公益信託倫雅美術奨励基金運営委員長、大川美術館館長)

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